「マックによるデータベース・マーケティング」
菅野和彦著 1994年・光栄刊より
ポイント5: リピート 「一回のお客を一生の顧客にする」
その関係をどのように維持・発展させるのですか?
信頼関係には終わりがありません。人間関係ですから、ここまで関係を良くすれば、あとは自動的にその良い関係が継続されるというものではありません。データベース・マーケティングのプロセスは、お客様との信頼関係が深まっていく過程であるといえます。ですから、買う前よりも買っていただいたあとの方がより重要です。買っていただいたときが本当のスタートなのです。
顧客サービス・顧客サポート
顧客サービス、顧客サポートをしっかり行なうことは、お客様に満足していただくことに責任をもっているということのあらわれです。責任のあるところに権威がいきます。よりお客様に対する責任を取れば取るほど信頼関係を深めることになります。
お客様から信頼されなければ、責任を失い、お客様からの次回の売上を失うことになります。
これは、明らかなほど明らかなことなのですが、十分に行なっている会社はごくわずかしかありません。買っていただくことをゴールだと考えてしまいやすいようです。
この顧客サービス・顧客サポートを戦略的ポイントとして重視して成長しているのが、エクセレント・カンパニーと呼ばれている会社です。満足保証シールが優良企業にはついているのです。
あてになるサービス
とてもおいしいときもあるし、まずいときもあるようなレストランは繁盛しません。それよりは、まあまあの味、まあまあのサービスでも、一定していてあてになる店が繁盛します。マクドナルドやファミリー・レストランなどはその例です。あの店に行けば、あれが食べられるという安心感のもとに、海外旅行時にマクドナルドに入って日本の店と同じ味だったことにホッとした人も多いことでしょう。
あてになるサービスは安心です。信頼は安心を生み出します。「顧客満足」はこれが土台です。
繰り返し購入と商品の発展性
利益はどこからくるのでしょうか。リピート購入がほとんどです。新規顧客への販売より既存顧客への販売の方が20分の1の経費で済むと言われています。一度、買っていただいたお客様となるべく長くなるべく深い関係を継続しなければなりません。
最初のセールスだけに全力を尽くすべきではありません。買っていただいたあとが、競争の本当のスタート地点ですから、売る前から売ったあとのことを十分に考慮しておかなければなりません。
ですから、商品を繰り返して購入していただくことと、関連する他の商品も購入していただくことを念頭においた商品構成・サービス構成にしておくことは安定した利益につながります。
信頼関係は将来指向です。いままで良くやってくれたので、これからはもっと良くやってくれるでしょう。という信頼なのです。
これを無視すれば大変なことになります。あなたが成功していると知るや、すぐに追従者が迫って来ます。そしてすぐに追い越されてしまいます。商品だけの観点でいうなら、何年もかけて築きあげてきたものが数ヵ月の間に追い付かれてしまいます。それに比べて、信頼関係は真似しづらく、商品よりは追いつきづらいものですので、戦略的に重視すべきものです。しかし、信頼関係は一瞬にして自滅してしまうものでもあります。自分との戦いという競争です。
競争に勝つための差別化戦略を、競争相手を倒すためのものだとは考えないでください。お客様により良いものを選んでいただくために、提供している商品・サービスを明確にして、選びやすいようにすることが自由市場での競争です。お客様を喜ばせる競争です。それぞれの会社に仕えるべき市場があるはずです。それを見つけ、発展させるのです。
工夫には終りがない
マーケティングとは、市場創造であり、市場発展です。ただ作り出すだけでは創造的とはいえません。作り出した市場を、維持し発展させなければなりません。
創造的であるという言葉は、まったく新しいものを作り出すという意味なので、人間が勝手に古い秩序を崩すことによってうみだすものであると勘違いされがちですが、そうではありません。創造とは、人間をはじめとしたすべてのものに初めから備わっている可能性を十分に引き出すことです。
工夫するとは、可能性を引き出し、より高い質のものに変えていく働きのことです。必要なのは、秩序を壊すような働きではなく、建設的な継続的な工夫なのです。