DMBook 4−コスト効率 サービスはただではない


マックによるデータベース・マーケティング
菅野和彦著 1994年・光栄刊より


ポイント4: コスト効率 サービスはただではない

その関係はあなたの利益になっていますか?


サービスはただじゃない


なぜ、サービスは簡単そうで簡単ではないのでしょうか。それはサービスにはお金と時間がかかるからなのです。だれでも、お客様にサービスすれば売上が伸びることを否定する人はいません。まず第一に自分たちの利益ではなく、お客様の利益を第一に考えなければなりません。しかし、一方、売上偏重でコストの割合を考慮しなければ、その会社は死んでしまいます。自社がしっかりと立っていなくてほかの会社にはサービスできません。自社が成長することと顧客にサービスすることは相反することではなく相互補完の関係にあります。

カール・スウェル、ポール・B・ブラウン著の「一回のお客を一生の顧客にする法」 の中に、顧客サービスの十戒というのがあります。それぞれの戒めも悪くはないのですが、最後に追加されている「警告」がおもしろい。
「利益を出さない限り、この十戒は何の役にも立たない。金を儲け、企業が存続しなければ、顧客満足どころではない。」

失敗を取り扱うことができる

原則を明らかにし失敗を積極的に取り扱っていくところはデータベース・マーケティングの最大特徴のひとつです。

スポーツに似ています。サッカーを考えてください。ルールは簡単です。手を使わずに、相手の網の中にボールを蹴り入れれば良いのです。
ルールは簡単でも実践するのはそう簡単ではありません。手を使わないといっても、甲の内側や外側、ひざやもも、胸や頭などいろいろな場所があります。また、ゴロでころがす蹴り方も、山なりに蹴り上げる蹴り方も、カーブをかけることもします。個人的な技術が必要ですし、チームワークも必要です。
良い選手は、細かいところまで原則を身に付けて、経験によってどの蹴り方をするのか、誰にパスをするのかの感覚が身に付いている選手です。無駄がありません。効率的な選手は非効率的な選手と交代します。
良いコーチは、細かくポイントを指摘します。素人には見えないところまで良く見ています。全体のバランスを考えてチーム編成をします。フォワードばかりでも点数は入りませんし、バックスが良くても点数が入れられなければ勝てません。そして効率的なチームは非効率的なチームに取って代わります。

自由市場でもルールは簡単です。良い商品やサービスを提供して、お客様に買っていただければ良いのです。ルールは簡単でも実践するのはそう簡単ではありません。自由市場では、効率的な商品・サービスは非効率的な商品・サービスと交代し、効率的な会社は非効率的な会社に取って代わります。自分が失敗しているところがあるなら負ける前に早く細かく知って、正しいやり方を身に付けたいのです。

自由市場はさばきの制度です。お金を払うことは投票しているようなものです。自発的に市場でのさばきを受けるものです。さばきがなければ、何を作ればよいのか、いくつ作ればよいのか、いつ作ればよいのか、いくらで売ればよいのかなどは、わからないのです。なるべく早く、なるべく細かくさばきを受ければ、より良い、より大きな実を結ぶことになります。早く、正確なさばきを把握するためにダイレクト・マーケティングはとても有効です。

数字の一人歩きは本末転倒

数字にするといろいろなことをはっきりと取り扱うことができる一方で、数字が一人歩きする危険性がいつもつきまといます。学校でのテストの取り扱いに似ています。本人の能力の向上のためのあくまでもひとつの基準としてのテストなのか、テストで良い点を取れることを第一目的としてしまうのか違いです。
売上至上主義と同じように反応率至上主義になる危険性が十分にあります。お客様の反応を最も良く表している指標としての売上の数字の取り扱いを間違えると、「顧客満足はどのぐらいの売上につながるのか。売上につながらない顧客とは関係を持たずに効率を上げよう。」ということになってしまいます。
管理者は新しい管理基準ができたことを喜んで、プロモーションの善し悪しをお客様からの反応率だけに注目して評価しがちです。他社との比較や部門間の比較など、数字は勝手に一人歩きしやすいものです。すぐに管理者と担当者の争いが始まってしまいます。そして、担当者の方も、提示されている管理基準を達成することだけに目がいってしまいます。
私が持っているマーケティング関連の本はふたつのにおいに分けられます。売上につながるという点が強調されすぎたお金のにおいがぷんぷんする本と、サービス自慢とサービス・ノウハウが紹介されている良い実の香りのする本です。お客様に仕えることを喜んでいることが伝わってくるような本は、読んでいて元気がでます。理論的な本であってもそうです。理論の前提になっている感覚は本に表れてしまうものです。
データベース・マーケティングの2大特徴は、双方向性と数値化にあるといわれていますので、特にこの誘惑に負けないように気を付けてください。私は、この点が最もデータベース・マーケティングで陥りやすい間違いだと考えます。
人間中心のマーケティング・システムが目指すところです。お金中心ではありません。システムが中心でもありません。あくまでも人間が中心です。お客様だけではなく、マーケティングに関係するすべての人々、経営者もマーケターも電話受付も配送担当も信頼関係の上に成り立っています。
その会社、ビジネスを作り上げている関係者がもっている前提となっている考え方が、マーケティングにも表れてきます。良い実の香りのするマーケティングを行いたいものです。


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