DMBook 6−第1章 むすび


マックによるデータベース・マーケティング
菅野和彦著 1994年・光栄刊より


以上の5ポイントを基準にして評価してみると、そのマーケティングの強いところと弱いところが明らかになります。


テレビ・ショッピング

たとえば、テレビ・ショッピングを考えてみてください。
まず、アイデア商品か超安値の商品がテレビでアナウンスされます。1)お客様に役に立つように良く考えた商品で、しかも安く提供されます。2)簡単に注文できるようにもちろんフリーダイヤルですし、納品も早く返品も自由にできます。3)直接メッセージを流し、直接反応を収集しますので、4)宣伝に投入した費用とそれに対する効果は、半日で完全な解答が出せます。5)しかし、前のアイデア商品が売れたからといって、今度もおなじ人がアイデア商品を買ってくれるとは限りません。アイデア商品では商品間の関連性が薄く、継続的なマーケティングの方法であるというより一発勝負の要素が強い売り方だといえます。

コンタクト・イーズの失敗

冒頭でご紹介したコンタクト・イーズにも失敗がありました。
何通も何通も忍耐強くアプローチしてくれましたので、やっと重い腰を上げて購入を決めてから商品が届くのを心待ちにしていました。すぐに送ってくれたのは送ってくれたのですが、開けてみると中身はもうすでに知っているものばかりでした。デモ版と同じフロッピーと操作マニュアルです。
私が期待していたのは、フォロープランの事例集でした。ここまでノウハウ見せてくれたので、もっと見せてくれることを勝手に期待していたのです。お金を払っても、「買った」という満足感が無かったのです。
しかし、サポート・デスクに電話をして事例を知りたいことを伝えれば、きっとすばらしいサポートをしてくれたことでしょう。もちろんマネー・バック・ギャランティーがついていますので、大きな失敗ではないのですが。
商品は、買うまでにすべてを見せる必要はないし、購入したという満足感を味わえるように余裕を残しておかなければならないことを学びました。

ベンチャービジネスや新しいプロジェクトにデータベース・マーケティングは最適

この本を書こうとしたひとつの目的は、ダイレクト・マーケティングやデータベース・マーケティングは、私共と同じようなベンチャー・ビジネスや始めたばかりの新しいプロジェクトにこそ導入しやすいことを紹介したかったからです。
ダイレクト・マーケティング関連書で紹介されている事例は、アメリカ、日本を問わず大手企業の大掛かりなシステムばかりなので、巨額の投資をしないと始められないかのように考えがちです。しかし、大企業が積極的に導入しようとはしていますが、すでに既存の制度が動いている会社にとってはマーケティング方法を全社的に大幅に改革することは簡単ではありません。なぜなら、データベース・マーケティングは、マーケティングのひとつのテクニックではなくシステムだからです。部分的に良いところだけ従来の方法に取り込もうとしてもうまくいきません。全体的なマーケティング制度として取り入れなければ成り立たないからです。そして、データベースから明かとなった市場の情報に機敏に反応しなければなりませんから、組織が大きすぎると動きも鈍くなるのです。
ベンチャー・ビジネスの場合、会社内に既存のマーケティング・システムがあるわけでもありませんし、少人数ですから融通がききます。顧客についての情報も商品についての情報もまだそれほど多くなく、紙で管理できる程度ですから、それまでの情報をどう扱うか悩む必要もありません。ビジネスが大きくなることを夢見て、じっくりと試しながら、自分たちにあったデータベースを作り上げていくことができます。
また、既存の会社の中でも、新しいプロジェクトは、小さくテスト的に始められるものですので、新しいシステムも取り入れやすい環境だといえます。

デスクトップ・マーケティング

幸いコンピュータは小型化し、処理能力も格段に向上しています。デスクトップ・パブリッシングが身近な仕事のクオリティーを高めてくれたように、パソコンを使ったデータベース・マーケティング「デスクトップ・マーケティング」は、普通の会社のマーケティング生産性を普通以上に高めてくれる戦略的道具になるに違いありません。


Copyright 1997 kanno@kanno.com Updated 1997.03.24
[
Home ]